電子商店奮戦記
大阪は豊中市、万博で有名な閑静な住宅地にある家の台所の一角。ここに、頑張りやママのお花屋さん「1stフラワーワークショップ 花のギフト工房」があった。主宰しているのは、主婦で三児の母でもある萩本さわ子さん。生花というアナログの世界と相反する、インターネットというデジタルの世界。そのクロスポイントで、萩本さんは長年の夢を咲かせていた。
これなら転勤族の私でもできる 夢を実現するWEBショップ
子供の頃から花が大好きだったという萩本さん。家に花が絶えたことはなく、花ある暮らしを楽しむ毎日。
ページに掲載されているプロフィールにも「中学1年生より親にせがんで草月流の生け花をはじめ30年!?のキャリア」とある。まさに“好きこそ物の上手なれ”。
だから、ずっと花に携わる仕事をしたいと思っていたものの、転勤族の夫との家庭では花屋を開店するのは無理と諦めていたのが現実。そのうえ、運転免許証を持っていないため花屋での仕事を断わられること数度。
そんな姿をずっと見続けてきたご主人が、ある日、一冊の雑誌を手に帰宅した。そこに紹介されていたのは、WEBショップやSOHOでイキイキと自分の夢を手に入れている人たち。そして、このことが萩本さんに転機をよんだ。
「好きな花いじりを活かすチャンス!これだわッ。」
と、ピンときて即実行してしまったというから、とても行動的な人である。
ご主人、家庭平和作戦を実行する?
とはいうものの、それまでの萩本さんは決してコンピュータに詳しい人ではなかった。それどころかコンピュータに、いや、日がな自宅のMACに向かうご主人に、少々反感。しかし、却ってこのことが決断を促した。趣味と実益を兼ねた夢を実現する手段として、そこにたまたまコンピュータが、インターネットがあった、というわけである。
また、関西国際空港の広報スタッフとして空港のホームページを立ち上げたというご主人がいたからこそ、ページを作ることに余計な気負いがなかったのかもしれない。こうして、実力を活かす場所と妻のご機嫌を保つため、ご主人の作戦は、見事成功したのだった。
初めての自分のお店!ネットのメリットを活かす。
豊中市にある日本で2番目に大きな生花市場、大阪植物取引所。ここで月・水・金に行われる仲卸に、自転車で30分かけて(好きという原動力はすごい)花を仕入れにいく。
その後アレンジした花は、デジタルカメラで撮影し注文者にメールで送信する。ちょっとしたことだが、このネットならではのサービスが客の満足度をアップさせる。また、場所柄、空港や高速道路が近く物流に恵まれていたことも幸いし、仕入れ日の朝8時までに届いた注文なら翌日の配達が可能、という考えられない早さで対応。最も気を使っているという花の鮮度についても、注文分だけを仕入れる無店舗売切り制のため、新鮮なものをたっぷり使える。
「夏は鮮度を保つため、家の冷蔵庫が花でいっぱいになることもあるんですよ。」
と、今でこそ笑顔で話すが、その実、ここにたどり着くまで、花を買うに至るまでが大変だったという。
これなら転勤族の私でもできる 夢を実現するWEBショップ
実は当初、ドメインの取得に始まりネットビジネスの手法、花の流通のことまで全くわからなかったという萩本さん(花を買うまでが大変だったというのも納得)。そこでまずは図書館に通い、アメリカのネットビジネスや流通に関する本から、花屋さんになりたいといった類まで結局100冊近くを読み漁ったり、花や資材の仕入先探し、梱包した花を実家に送っての輸送テストなど、約3ヶ月間をこうした調査に費やしたという。
また、ネットの動向や技術的なことを知るため“関西ウェブマスター”に毎回参加。ここで、同じ夢を志すWEBショップの先駆者に出会えたことが今をもたらすことになった。
ネット上の通信販売というマーケット自体をもっと育てたい、という考えから敢えて試行錯誤の体験談をページに公開していた『Easy』の岸本栄司さんはじめ、『電脳乞食』の森本繁生さん、『心斎橋みや竹』の宮武和広さん、そして『電子商店街IPPIN!!』)の仲間から、心強い指針とパワーをもらった。
「皆さんに経営コンサルタントをしてもらってるんです(笑)」
と感謝の気持ちでいっぱい。
大手店舗と競合しない知恵 顧客の心理的障害を取り除く
さて、WEBショップといえば気になるのが支払方法だろう。
現在、採用しているのは、郵便振替、銀行振込、そしてso-net会員用のカード決済smashの三種だが、更に選択の幅を広げたいと、コンビニエンスストアでの振込みとアコムが扱う電子決済、アコシスを導入する予定でいる。
インターネットを利用する会社が増えた証か、男女ほぼ同数という注文者のほとんどが、花屋になかなか足を運べない会社員。ゆえに郵便局や銀行に行く機会も少ないだろうということと、カード決済が必須の海外から、日本の家族や知人宛の注文が少なくないためである。
また、支払いは利用者に安心便利な後払い制。確かに先払いでは不安なうえ日数もかかり、せっかくの注文意欲も失せるというもの。花のように、贈りたい日のあるギフトなら尚更だ。しかしそれゆえのトラブル、未入金もちらほらある。それでも先払いにしないのは、購入時に心理的障害となることは取り除き、店の敷居を低くしたいからという。
花もサービスも、楽しく咲かして! 変わらずに大切にしていきたい
ショップオーナーが集うメーリングリストや、宮武さんのページにある“戦略会議室”での情報交換で前進するうちに、気がつけば立ち上げから早や一年。大変だが充実した日々のなかで萩本さんは、売り上げだけに躍起になるのではなく、個人で賄える質と量を大切にしていきたいと考える。
そんな気持ちが伝わってかリピーターが多く、初めてアクセスした人、つまり花を贈りたいという目的を持ってきた人のほとんどが注文しているのだそう。
これからもネットを通じて、一人一人への心配りと誠実さ、また一女性として消費者側から見た柔軟なサービスを志す。
昨今では社会復帰を望む女性も少なくないが、それに応える社会の間口はまだまだ狭い。だからこそ、ここに新たな可能性を賭けるチャンスがあるとはいえないだろうか?
最後に「WEBショップとはいえ、普通の店舗でも成功する力や度量がないとうまくいかないのでは?」
と語ってくれたのが印象的だ。
● 萩本さんの一日
朝、まずはメールチェック(注文メールは一日中、約2時間おきにチェック) → 受注確認メールを送信。FileMaker
Proで作った受注台帳へ入力 → 自転車で30分かけて市場に花を仕入れに行く。帰宅後すぐ、花の水あげをする → 午後、水切りをした花をアレンジ(制作時間は1個につき約15分) → 完成品をデジタルカメラで撮影(撮影後は、なるべく実物の色に近づけるためPhotoshopでレベル補正をする) → 商品をラッピング → 商品とともに送るカードや手紙を作成、プリントアウト→箱入れ、梱包 → 発送 → 発送通知メールに、宅配ネット確認ナンバーとデジタルカメラで撮影した写真を添付して送信→請求書を郵送して完了