数歩先行く米国ダブルワークに学べ
AM9:00からPM4:00までは、個人事業のビジネス・コンサルタント
PM5:00からPM8:00までは、クラブのジャズ・シンガーも珍しくない国。
アメリカには、二つの仕事を持って活躍している人達が沢山いる。ユニークな発想を元に、自ら新しいビジネスを展開し、夢を夢のままで終わらせなかったダブル・ワーカー達だ。自分の可能性を信じて、自分らしい生き方を見つけたい。そんな熱い思いが伝わってくる。
会社員・コンサルティング事業
─子供時代から身につけてきた仕事に対する意欲と自立心─
ジョディー・リー・グレニアー さん
「仕事は私にとってかけがえのないものです」と語るジョディー・リー・グレニアーさん。
ケンブリッジにあるLesley
Collegeの大学院生で、超多忙な毎日を送っているダブル・ワーカーだが、仕事に対する意欲は子供の頃から既にあったという。
「11才の時から、レストランや芝刈りのアルバイトをして自分のお小遣いを稼いでいました。日本では、小学生が働くなんて考えられないかもしれないけれど、アメリカでは、お金に対する知識をつけさせるという目的で子供にアルバイトをさせる親が多いのです。だから、若い人でも金銭面では、非常にしっかりしています」
起業家になった人のほとんどは、彼女のように、十代に収入を得る大切さを学んでいる。
SOHOな経営で始まった 父親の会社を手伝う
自宅にスモール・オフィスを構え、完全在宅勤務で父親の経営する会社の社員として働いている。勤務時間は基本的には、月曜日から金曜日の午前8時から午後5時までだが、彼女のスケジュールによって異なる。
この仕事を引き受けた理由について語ってくれた。
「父の会社の本社はノース・カロライナ州にあり、当時、マサチューセッツ州にも営業代理店が必要だったのです。その頃、私はマサチューセッツ州の大学院に入学が決まり、授業料を支払うため、勉強に差し支えのないようなフレキシブルな仕事を探していました。ちょうどお互いの条件があったのですぐに採用が決まりましたが、何よりも良かったのは、1800キロも離れたノース・カロライナ州で会社を営む父と電話やインターネットを通じて連絡を取り合えるという点。二人とも寂しい思いをしなくて済みます」
彼女の父親が1988年に設立したHarvard
Logistics(ハーバード・ロジスティックス)という会社は、乙仲業者。ビジネスを立ち上げた当初は、ノース・
カロライナ州にある彼の自宅がオフィスだった。その頃は、ビジネスの伸びはゆっくりで、利幅が非常に小さかったそうだ。そんな時、家族や親戚が一丸となってサポートをしてくれた。
「最初はあまり繁盛してなかったので、母親や親戚までが外に出て働いて生活費を稼いでいたのです。」
家族総出で協力しあった甲斐あって、今では7人のスタッフと1人の秘書を雇い、オフィスビルを持つほどに大きく成長した。
異文化との交流に魅せられて、個人ビジネスを開始
「世界中の人たちと交流を深めるのが私の夢です」
国際交流に情熱を抱くグレニアーさんは、最近、友人のアシュリー・ショートさんと事業を始めた。
経済市場のグローバル化が進み、ビジネスで海外渡航をする人が増えている。しかし、異国の土地での滞在には、色々と困難が付き物だ。些細な事が原因で深刻な問題に発展し、被害に会う事もしばしば。問題を事前に防ぐためには、正しい知識や適応能力が必要になる。こんなニーズに応えようと彼女が思い付いたのが、異文化間コミュニケーションのコンサルティング。
「アメリカに訪れる留学生やその配偶者、これから海外に出る社会人やキリスト教の宣教師を対象に異文化間コミュニケーションのセミナーを開いています。このセミナーは国際人養成講座のようなもので、言葉の問題から生じる誤解、文化や慣習の違いで起きるトラブルなどを軽減できるように、ノウハウを身につけるためのプログラムが組み込まれています。初めて訪れる国でコミュニケーションを円滑に行えるように、そして、予期しない状況にも対応できるように、細かく指導するのが私たちの仕事です」
この他にも、銀行口座の開き方などの実用的な面でのカウンセリングも行っている。基本的には、大学からの依頼に応じてセミナーを開いているので、もう一方の在宅の仕事との調整はしやすいという。これは、父親との強い信頼関係を築く事ができたからこそ可能なのであり、彼女自身の懸命な仕事ぶりが評価されたのは言うまでもない。
コンサルティング事業は様子を見て業務を拡大していきたいと考えている。異文化間の隔たりを少しでも縮める事ができればというのが彼女の願いだ。
起業家の父の影響は大きかった
28歳という若さでビジネスを興し、夢に向かって堅実に頑張っているグレニアーさんを支えているのは、父親から学んだ仕事の倫理。
「大企業に勤めていると、他人に雇われているからいろいろな制限があります。例えば、何百万ドルという大金を動かしているのに、自分の実際の収入はその20分の1。そして、その割には合わない労働時間。それに比べて、独立してビジネスを持てば、勤務時間はフレキシブルで物事の決定権はすべて自分にあります。ただ、会社に勤めている時のように、毎週の給料が保証されないというリスクを負う事が不安で、独立まで至らない人たちが結構いるのです」
最低でも、ビジネスが軌道に乗るまでの3、4か月は、あまり利益を期待しないで気長に待つ根気強さが大切だという。
「その間に、もう一つの仕事でお金を稼いでおけば良い。そのうちに、自分のビジネスの方が少しずつ安定してきて、本業だと思っていた仕事が副業になってしまう事だってあり得るんですよ。それがダブル・ワークの楽しいところです」
個人ビジネスを始めるための米国環境の優位性
現在、好景気が続いているアメリカ。失業率も4・5%と低い。ここ数年、リストラで職を失った人たちが何百万人もいると言われているのに、どうやって今は失業率をこれだけ低く抑えていられるのだろうか。
一つの要因として、Home-Based
Business(ホーム・ベースト・ビジネス)が著しく伸びているのが挙げられる。仕事を失った人たちが自宅を拠点に再スタートでき、在宅介護などで外出できない家族が家にいても収入が得られる。つまり、職を増やし、多大な経済効果をもたらしているのがホーム・
ベースト・ビジネスの利点である。
3000万人ものSOHOワーカー
自分の才能やアイディアを活かしながら自信を持ってビジネスに取り組んでいる。それは、自分の努力がいずれは評価され、ビジネスを繁栄させるチャンスにつながる事を知っているからだ。実力・能力主義の社会は日本のような年功序列や派閥がなく、すべての人に平等にチャンスが与えられる。人種、年齢、性別も大きな障害にはならないので、最終的には、個人の実力が評価の対象になるのである。
個人の力が重要視されるアメリカでは個人ビジネスが盛んである。多少、奇抜で大胆な発想でも、便利で安い製品の開発は比較的容易に受け入れられるケースが多い。たとえ、小さな資本であってもアイディアが良ければ、自然と投資者も増えバックアップしてくれる。また、資格がなくても特定のマーケットで経験が豊富であれば、個人ビジネスの道は開ける。このような環境だからこそ、次々とダイナミックな製品やサービスを生み出せるのだ。
ただ、いくらチャンスがあるからといって、誰でも起業できる訳ではない。豊富な知識、情報力、判断力、柔軟性、向上心などが備わっていなければならない。これらは、アメリカや日本に限らず、世界のどの国でも求められる起業家としての資質であると言えよう。
アメリカは日本のような複雑な規制がなく、政府や公的機関によるサポート体制が充実しているのも、SOHO型のビジネスを興し易い理由の一つである。