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企業が試みるSOHO
サテライトオフィスの現状と可能性

〜痛勤地獄と住宅ローンからの解放〜

サテライトオフィスという言葉をご存知だろうか。社員の住宅の近くに設置された小さなオフィスのことで、職住接近を推進する新たなワークスタイルだ。
場合によっては、社員の自宅をオフィスにすることもあり、その形態から見るとSOHOとよく似ている。いわば企業内SOHOのようなものだ。そこで今回は、サテライトオフィスの現状を報告する。

■サテライトオフィスの歴史

 サテライトオフィスの歴史は、1973年頃のアメリカ・ロサンゼルスで始まる。きっかけは、70年代に問題となったエネルギー危機だ。アメリカではマイカー通 勤が盛んで、この状況を見直す必要に迫られていた。

 自動車道路網の代わりに、電子通信網を利用した方が有効だという考え方が生まれ、これがテレワークと名付けられた。テレワークとは、テレ(遠くで)とワーク(働くこと)を組み合わせた造語だが、現在では、サテライトオフィスよりもこちらの言葉を使っている人も少なくない。

 80年代になると、パソコンの普及や低価格化、女性の職場進出の急増などでよりいっそう注目された。80年代の後半、アメリカ経済は不振を究め、生産性の向上や地域経済の活性化、雇用機会の拡大などを目的とした公共政策の一環とされるようになる。

 90年代に入ると、企業のリストラやダウンサイジングが話題となり、サテライトオフィスに新たな視点が加わった。

 日本では、1984年に東京の三鷹市で行われたNTTによる実験が最初とされている。本格的な実験は、88年〜90年に埼玉 県志木市で行われた志木サテライトオフィスでのものだ。

 日本の導入動機としては、アメリカのような理由の他、大都市の一極集中の是正、通 勤混雑の緩和、主婦・障害者・高齢者などの雇用機会の創出などが挙げられる。

 80年代の後半にはバブル経済が訪れ、家賃が高騰し、企業は真剣にサテライトオフィスを検討し始めたが、バブルが崩壊した後は、その熱も冷め撤退する企業も目立った。そして93年頃から、パソコンが急速に普及しインターネットやLANなどの情報環境が整備されるに従い、サテライトオフィスが再び注目されている。


■サテライトオフィスのメリットとデメリット

 志木サテライトオフィスには様々な企業が参加したが、導入メリットとして次のような声が寄せられた。

1・通勤時間の短縮及び仕事の効率化により、自由時間が増加した。
2・自由時間が増加したことで、家族とともに過ごす時間も増え、
  ゆとりある生活が実現した。

3・良好な就業環境によって、知的生産性や創造性が向上した。

 なかなかメリットを数値化して表すことは難しいようだが、富士ゼロックスでは、アウトプットされたドキュメントの数が増えたという成果 も出ている。

 富士ゼロックスは、志木サテライトオフィスの実験にも当初より参加し、現在も積極的にサテライトオフィスを導入している数少ない企業だ。現在、東京近郊に数カ所のサテライトオフィスを設けている。1万5500人いる社員の中で、サテライトオフィスに勤務している数は約100人。

 サテライトオフィスへの勤務は、原則として社内で希望者を募集する。業務命令による異動はない。中間管理職の人が勤務することもある。本社への出社回数は決まっておらず、その都度必要があれば本社へ出向く。勤務時間は、本社自体がフレックスタイム制を採用しているので、コアタイムさえ抑えれば、後は個人の判断に委ねられる。

 デメリットはあるのか。

 導入していない企業の中には、人事評価に対する不安や、コミュニケーション不足による疎外感をイメージしているところも少なくない。また、サテライトオフィスに向いている部門がない、管理が困難であるといった理由も目立つ。

 実際にはドキュメントがデジタル化されていなかったり、データベースの構築がなされていなかったりと、企業側に問題がある場合もある。

 ただ、富士ゼロックスでは大きな問題は起こっていない。人事評価は、目標を設定しその達成率で評価しているので、サテライトオフィス勤務でも本社勤務と同じように評価できている。ネットワークなどのインフラも充実しているので、没交渉になることもない。

 サテライトオフィスはまだまだ一般の企業には浸透していないが、サテライトオフィスが持つ基本的な理念の方向に世の中が進んでいることは間違いなさそうだ。サテライトオフィスの試みやSOHOワーカーが増えることにより、ライフスタイルをも変えるだろう。

 職住が接近することで、都心の高額な住宅を無理して購入する必要もなくなり、住宅ローンからも解放される。今後賃金の右肩上がりは期待できないが、お金では得られないゆとりや、心の豊かさが実感できるのではないだろうか。

 サテライトオフィスやSOHOは個を生かす。それは個と組織の関係を見直すことになる。だが、個は自分をマネージメントする力が不可欠となり、「何ができるのか」を求められるようになる。サラリーマンであろうが、独立したSOHOワーカーであろうが、スペシャリティを持たない個には厳しい時代が訪れそうだ。













 

※ご利用に際して

当情報は 2000年の春〜秋に発行された雑誌「DOPPO」の各記事を元に編集されております。
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