SOHOは知恵と技術を生かす平成のマイスターである。組織という大きなバックボーンに守られているわけではない。まさしく腕一本、技ひとつで生きる独立独歩の職人ともいえる。SOHOという道を選んだからには得意技を磨き、仕事にこだわりをもち続けながら自らをグレードアップしていかなければならない。平成のSOHOマイスターたちは日々努力を続けながら、新しい仕事の形と技術を切り開こうとしている。
取材・文=木村由美子
賞がきっかけで本格的なビジネスへ
船本みゆきさん(3Dクリエイター)
●夫の協力で3Dソフトを習得
船本みゆきさんは26歳のときに賞をとり、3Dクリエイターとして本格的に活動を始めた。そして初仕事は雑誌の3Dイラスト制作だった。
京都生まれの京都育ちである船本さんは21歳で結婚、専業主婦になったが、夫の仕事の関係で家にあったパソコンに自然に慣れていった。船本さんはデザインの基礎を独学。マーク・フォントデザインの仕事をしているご主人に教えられ、イラストレーターやフォトショップを操作するようになっていく。
「好きなことだから熱中できました。新しい知識を身につけるのが楽しかったですね」
やがて3Dに目覚め、プロとしてのレベルまで到達するようになる。自分の作品に自信が持てるようになった船本さんは、積極的に企業に対して売り込み作戦を開始した。
デザイナー、CGクリエイター、WEBデザイナーなどを募集している企業を探し、履歴書と自分の作品を送付。「在宅でも可能でしょうか?」と提案していった。50件のうち1件から仕事依頼があるかどうか、という厳しい状況だったが、やがて京都のデザイン会社からの依頼で、スポーツマークのデザインを定期的に行うようになった。
●子供がいても仕事ができるSOHO
現在は大阪や京都からの依頼が大半を占め、スポーツマークのデザインをはじめ、ホームページのデザイン、建築パースの制作などを行っている。3Dで女性の人体キャラクターを作る場合、体のラインにこだわるという船本さんの作品は、独創性に富んでいる。オリジナリティを追求していきたいが、個性を出しすぎると「イメージが合わない」とクライアントに言われてしまうのでバランスが難しい。
「3Dで奥行きのあるホームページを作っていきたいし、ゲームキャラクターのデザインもどんどんやっていきたいですね」
船本さんは「子供がいても仕事ができる」という理由でSOHOを選んだという。子供を幼稚園へ送っていき、朝9時半頃から仕事を始めるが、仕事によっては作業が夜中まで及び、目が回るほど忙しいときもある。複数の仕事を抱え、主婦業もこなす毎日だ。
SOHOは、自分のペースで自由に仕事ができる反面、営業、交渉、制作、納品までをすべて一人でこなさなければいけない。失敗したら次の仕事はこない、というプレッシャーも常につきまとう。SOHOで仕事を始め、「自由を得るためには、それだけ責任を背負わなければいけない」ことを知った。
船本さんのように独学の場合、誰のカラーにも染まらないことで個性・アイデアが全面
的に出る。やる気次第で独学でやっていける世界だという。積極的に売り込めば、中には声をかけてくれる企業もある。実績を重ねていくことで次の仕事につながっていく。
「忙しい、しんどい、と思うこともあるけれど、好きだからやっていける。とにかく明日につながるいい仕事をしていきたいですね」