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    これが私の生きる道

脱サラ・ルネッサンス これが私の生きる道
〜会社を捨ててわが道を行く〜


自営として活躍中
5人のそれぞれ
独立自営物語

 これまで慣れ親しんだ職場を捨てて新たな環境に移ろうとするとき、何かきっかけがないとなかなか決断できないものだ。それが生活の糧となる職業を、それも180度方向転換するとなるとなおさら慎重になる。その「きっかけ」をチャンスとして受け止め、新しいステージで自分らしく生きている5組の自営業の方々を紹介。

21世紀は農業の時代「とちおとめ」にかける若きファーマー
ウスイファーム 臼井美幸さん

●周囲の反対を押し切っていちご農家に転身

 いちごの香りが立ち込める中、今朝取ったばかりの「とちおとめ」をパックに並べながら、臼井さんは語る。

「日本の通信や情報機器が、アメリカに比べて2、3年遅れているのを痛感しました。向こうは、ポケベルは既に3行表示が当り前だし、CPUは小型化されていましたからね。」

94年にIBMのアメリカ研修旅行に参加したときの体験は、まさにカルチャーショックだった。

 さらに、景気にも陰りが表われ始めていた頃で、営業マンとして培ったノウハウや誇りも揺らいでくる。仕事への情熱もやがて薄れる。会社を辞めて、自分で何かをしたい。では、何をしよう。趣味で始めたインターネットを生かすことはできないか? 新天地を求めての模索が始まるが、意外なところであっさりと結論が出る。

 臼井さんは、生まれも育ちも栃木県の壬生市。回りはいちごのビニルハウスが建ち並ぶ。たまたま、近くに住む親戚 の増山さんが、使っていないビニルハウスを持っていることを聞いて、いちご作りを決めた。一番気に入ったのは、いちごの収益の確実さと農業の「働いた分だけ収入につながる」という明快さ。

 いちご農家としての独立の考えを話すと、母親は当然のことながら、周囲の農家や増山さんまでもが反対した。しかし、自ら頑固だと認める臼井さんの意思は変わらない。増山さんのいちご作りを1年間手伝いながら農法を覚え、空いているハウスを借り受けることとなった。

 

●収穫時期まではひたすら我慢

 97年、いよいよ自分のいちご作りが始まる。

 まず、ハウスの整備。水道の配管、電気の配線も自分で行う。メンテナンスを考えると、状態を把握していた方が自分で修理ができて、復旧に時間がかからないからだ。50mのハウス4棟を一人で仕上げた。また、いちごは畝を作ってそこに植えていく。畝作りのための機械は一年に1回しか使わない。経費節約のため、一升びん1本を持っていき貸してもらった。

 いちごは親株から子苗を取って増やしていく。苗は一度、鉢に植えて一定期間栽培し、ある程度の大きさのときにハウスの畝に植える。200本の親株から8000本の苗を取ることができた。そして、9月中旬から苗の定植を始める。

 開花時期には、蜜蜂を業者から借りてハウスに放す。また、いちごは病気に弱いため、消毒も怠ることができない。畝にビニルをかけたり、暖房の準備をしたりと、時間に追いかけられる日々が続いた。

 とちおとめの場合、開花後30〜40日で収穫できる。

「いちごには、急激な温度差や日照不足は大敵ですからね。特に、この期間が要注意なんです。」

と臼井さんは淡々と話す。おそらく、薄氷を踏む思いだったろう。

 加えて、蓄えも目に見えて減っていった。一般に、農家は収穫までは収入がない。作物を売って、初めて経費なども支払える。そのときの心境を尋ねると、

「隣のハウスでは40年いちご一筋の増山さんが、一か月早く収穫してたから、うちも大丈夫とは思っていましたけれど…。」

と笑いながら答えてくれた。

 

●香りが特徴 ウスイファームのとちおとめ

 ウスイファームでも12月に入り、いちごの収穫が始まった。クリスマスケーキに乗せるためのいちごの需要があるために、価格が急騰する。1日の売上が10万円に及んだこともあるとか。ただ、昨年の場合は、ケーキに合うLの大きさのいちごが不足していたから高値が付いたそうで、毎年そうだとは限らない。

 現在、ウスイファームではとちおとめを市場に出荷しているほか、産地直送便として、消費者に直接いちごを届けている。また、直売店の契約を1店舗と結んでおり、自宅横でも直売所を設置している。臼井さんが初めて挑戦したとちおとめの評判は上々である。

 もともと、とちおとめという品種は大きくて甘くなる。しかし、臼井さんはある方法により、より強い香りを持ったとちおとめを作った。そのため直売店でも人気があり、週200パックを卸している。また、直売所で購入した人は、必ずと言っていいほど、リピーターになるという。

 目下の悩みは市場での価格が下がり続けていることと、消費者はいちごの時期がもう終わったと思っていることだ。

「直売所に来てくれるお客さんも、5月になると極端に減ったからね。」

と残念がる。ちなみに5月末までは確実に収穫できるらしい。

 標準的ないちご農家で、約10aのハウスからの売上は500万円になる。これが基準値らしい。ウスイファームの場合は、2月に収穫が落ち込んだのと自然発生的なロスが10%近くになるため、予想収穫量 は6〜7t。

「やる気と体力があれば、いちごはやった分だけ応えてくれる。」

ということばから、自分のとちおとめを初めて出荷して得た、確固たる自信が窺える。  

場所 栃木県壬生町七つ石2627
TEL 0282-82-4440
FAX 0282-82-4474
ホームページ http://home.interlink.or.jp/~usf/
E-mail usf@interlink.or.jp

 

 
 

※ご利用に際して

当情報は 2000年の春〜秋に発行された雑誌「DOPPO」の各記事を元に編集されております。
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