地方発 DOPPO人─富山─
地域社会に根をおろして活躍しているDOPPOたちから近況報告が届いた。それぞれ知恵と工夫と努力で独立独歩の道を歩き始めた人たちばかりである。なおこのレポートは本誌で募集した在宅記者がそれぞれの地域のDOPPO人に取材して寄せてくれた原稿である。
バイク好きが高じて 念願のバイクショップで独立
モトショップM's オーナー/松野曉人さん
●父親の会社の倒産を契機に自立への決意を固める
10坪の店内には6〜7台の大型バイクがいつも並んでいる。さらに外に4〜5台。
ここでエンジンを解体し、商談をすませ、食事をとる。この空間が松野さんのすべてなのである。松野さんの店「モトショップM's」は、開店してやっと1年を迎えたばかりだ。父親は会社を経営、欲しいものは何でも手に入るような環境で育った。ところが大学在学中に父親の会社が倒産。仕送りもストップし、学費が払えず大学を中退せざるを得なかった。
「とにかく金が必要でした。おまけにその頃地方のバイクレースに狂っていたから。生活費とレース費用を稼ぐ事しか頭になかったですね」
21歳のとき、一人暮らしで切羽詰まった状況の中、求人情報誌で見つけたバイクショップへ面
接に出かけた。そこの社長に気に入られ、下働きとして即採用が決定。幸運にも住むところまで提供してもらった。折しもバイクブームのさなか、バイクは並べているだけで売れていく時代だった。
「本当にラッキーだったと思う。もともとメンテナンスの技術は独学で身についていたし、バイク屋で働きながらレースに出場するのは自分にとってメリットが多かった。部品や工具、情報にしてもすぐに手に入りますから」
しかし、ケガを境にレースからは足を洗った。そのとき「将来は自分のバイクショップを持ちたい」と思ったという。
27歳の時、店長に抜擢されたが、会社側の都合により閉店。社長の好意で運輸会社の営業を勧められたが松野さんは迷った。雇われ店長だったとはいえ、松野さんの人柄と技術を見込んで買ってくれるお客も多かった。やはり自分でバイクショップを持とう、と改めて決心したが、身内や友人からは強く反対された。松野さんの心は揺れ動いたが、責任感とバイクへの執着が勝った。そして昨年4月末、とうとう自分の店をオープンした。
資金200万円を用意し、通りに面した貸し店鋪を借りて念願のバイクショップがスタートした。最初の年は「儲けがなくて当然」と腹をくくっていたが、予想に反して開店直後から年度末までの売上は4800万円に達した。バイクの出荷台数にして60台。修理の注文も増え、思いのほか経営は順調にいっているようだ。
「大きなバイクショップであれば台数を店頭にずらりと並べることができますが、うちはスペースも狭いので個性的なバイクにターゲットを絞りました。おかげさまで噂を聞きつけて県外から来るお客さんもいますよ」
店にあるほとんどが15年程前に流行ったカワサキZ、ホンダCBなど750CC以上のバイクである。昔のバイクは古いだけに故障も多く、メンテナンスも大変だが、これらの愛好家はバイクを大切にする人が多い。気持ちが通
じるだけに長い付き合いになるお客だと松野さんは言う。
「お客の信用を得る最低限の方法は店を常に開けておくこと。定休日なんてまだまだ贅沢です」
一人で店を切り盛りしているので営業活動をする暇もないのが実情で、今後はインターネットなども利用し、仕入れルートなども確保していく予定だという。
「店を始めてバイクに乗る暇がなくなったのが、苦痛といえば苦痛ですね」
(取材・文/大西香都佐)
●富山県富山市
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