経済界全体が平成不況にあえぐなか、女性起業家の元気がいい。すでに何年も会社経営に携わる女性、起業したばかりの女性…。経験年数の違いはあるが、経営者として共通
する条件がある。ここにご登場いただいた4名の女性起業家たちが異口同音に話すのは「マーケティングの重要性」である。それは、自らの仕事の経験と強みを生かすためにも欠かすことのできない要素だという。人に使われるより、自ら事業経営に歩み出した女性たちの経営に臨む独自の発想とその事業スタイルに学ぶべき点は多い。
無添加食品の産直店「味彩館」を設立
アスパック株式会社 代表取締役社長 石川由紀さん
●専門分野の知識とノウハウを生かして新事業を興す
石川さんは、今年5月、アスパック株式会社を設立した。農水産物や無添加の加工食品を産地から直接仕入れ、販売する生産者直売所『味彩
館』を展開する食品の会社で、その第1号店が、6月13日に東京・杉並区の高円寺北にオープンしたばかり。
「実はこの会社で、私自身、4つ目の経営なんです。もともと私自身の仕事の専門分野はSP(セールス・プロモーション)のプランニングであり、現在、もう一つ別
に広告代理店も経営しています。今度の食品店もその仕事の延長線上から実現したものと言えます」
日本板硝子を結婚退職後、石川さんは1977年からフリーランスのライター、SPプランナーとして活動。その間、主婦のグループによる会社、女性が一人で行ける居酒屋の経営も経験してきた。今回のアスパック設立は、この2番目の会社(居酒屋)を経営したときのある体験が引き金となっている。
石川さんは、山形県・櫛引町の農協青年部が主催する『日本の食糧を考える』というミニ懇談会に出席したことがある。その会は、自分たちが生産した農産物の東京での消費動向を探るために開かれたものだった。
「その時は、一消費者の視点からいろいろと意見を述べさせてもらったんですが、それがきっかけで、地元の農家へ直接に視察訪問することになりました。私としては、その時初めて、農家というものの実情に触れたのですが、以来、10年間にわたり、様々な地域の農家や役場などとのお付き合いを続けてきました。その下地があったために、今回の会社設立に結びついたというわけです」
●生産のプロと販売のプロとのマッチング
農業の分野でも、農協という巨大組織とは別に、無農薬・有機栽培の良質な野菜などを独自のルートで売り出そうとする農家の動きが目立って増えてきた。とはいえ、生産面
ではプロでも、販売面では素人の農家としては、自分たちの農産物を独自の販売ルートに乗せるという道筋を切り開くのは、なかなか難しいのが現状だ。
石川さんはそこに着目した。SPプランニングに数多く携わってきた経験から、販売店との付き合いもある石川さんは、一方で、販売側でも店主の高齢化と跡継ぎの不在という問題を抱えている店が少なくないことに気がついていた。この両者の経営ニーズをうまくマッチングさせられないだろうか、と考えたのである。農産物の中には品質が良いのに大手の流通
経路には乗らないものが結構多い。そうした良質の野菜や畜産品などを流通
の中間マージンを取られることなく販売できれば、消費者も良いものを安く手に入れることができる。
「しかも商品に魅力があれば、それを売る販売店としても店の特色を打ち出せるのではないか、と考えたのです。その両者を橋渡しする事業化の構想も、農家との長年のお付き合いがあったからこそ実現したものと言えるでしょうね」
石川さんは今後、生産地と商店街の活性化にも寄与する食品店『味彩
館』のフランチャイズ・チェーン化を押し進めていきたいという。
「主婦や女性でも可能ですから、ぜひ店長になって起業してほしいですね。店作りから販売方法まで、資金面
も含めて応援しますよ」と呼びかける顔には、主婦歴32年、SPプランナー20余年の経験からくる自信のほどが伺えた。
■プロフィール
44年生まれ。日大商学部卒業。日本板硝子勤務の後、77年からフリーのライター、SPプランナーとして活動。90年、広告代理店の株式会社アイ・コーポレーション設立。98年5月、産地直接仕入れの食品販売会社、アスパック株式会社設立。両社の代表取締役を兼任。