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日本のアウトソーシング時代の幕開け

 昨年8月1日、「日本初の総合アウトソーシング会社」という触れ込みで、日本アウトソーシング(以下NOC)がその営業を開始した。

 NOCは、人材派遣の最大手パソナとNTTデータ通信、日商岩井の三社が、それぞれ40%、30%、30%の持ち株比率で設立したジョイントベンチャーである。

 営業開始に先だって行われた記者会見の席上での、パソナ南部靖之代表のあいさつが非常に印象的だった。このような場には慣れた感のある南部代表が、めずらしく高揚した様子でこの会社にかける期待の大きさを語ったのだ。

 「NOCの設立は、日本のアウトソーシング時代の幕開け」だというのである。そして、「将来的には、NOCの事業が人材派遣と肩を並べるぐらいに成長する」と語ったのだ。NOCは、情報処理はもちろん、人事から経営管理、営業まで、企業の経営上必要な業務のすべてを受託することができる日本初の《総合》アウトソーシング会社だという。

 そもそもアウトソーシングとは、どういった概念なのか。南部代表が、初めてアウトソーシングという言葉に触れたのは彼が自宅を構えるアメリカだったというが、この言葉が注目されるようになったのは、1980年代のアメリカにおいてである。

 当時のアメリカでは、長引く不況から脱出するため企業のリストラクチャリングが推進されていた。肥大化し競争力を失った組織を救う方法は、自社の経営資源をコア業務に集中させ、それ以外の部分は外部委託することだった。アウトソーシングはリストラクチャリングの一環として実行されたわけだ。

 コスト削減、経営の効率化の実現は、とりわけ、コンピュータを活用する情報処理の分野に顕著にもとめられた。高価な設備投資、そしてそれを運営する人材の確保。日々急激に変化を遂げる情報処理の分野の技術革新に自前の経営資源で対応していこうとすると、とんでもない費用が必要となる。アウトソーシングが情報処理分野を中心に広がっていったのはそんな理由からである。その後、情報処理に限らず、総務、人事、カスタマーサービス、財務、マーケテイング、営業、運輸など、どんどんその分野は拡がっていった。いまでは、人事分野だけでも、採用、教育など十数種類に細分化され、それぞれ専門の会社が存在し市場規模は約1000億ドルにも及ぶという。

世界一のアウトソーシング企業EDS

 アウトソーシング先進国アメリカでその市場の23%のシェアを誇るEDSは、アウトソーソングを語るうえで欠かすことができない会社である。

 同社は1962年、あのロス・ペロー氏が創業した会社だ。当時IBMの営業マンだったペロー氏は、高価なコンピュータを購入しても使いこなせない顧客が多いことに注目する。そこで彼は、コンピュータを売るのではなく、「企業のシステム部門が行っていた業務そのものを一括して請け負うサービス」を新規事業として、会社に提案する。「それまで企業が行っていた業務そのものを一括して請け負うサービス」、まさにアウトソーシングの原型がペーロー氏の頭の中にできあがっていたことになる。

 しかし、ペロー氏のこの提案は「利益が少ない」という理由で却下されてしまう。それなら自分でつくってしまえと、設立した会社がEDS(エレクトロニック・データ・システムズ)だ。その後EDSは84年にゼネラル・モーターズの傘下に入りグングン売り上げを伸ばす。一昨年の6月、EDSはGMに5億ドルを払うことで自社株を買い戻し分離独立の道を選択した。

 米国では、IBMやマイクロソフトと並んでコンピュータ産業界の巨人として知られる同社も日本での知名度はことのほか低かった。しかしEDSは、南オーストラリア州政府と結んだ契約によって日本でもその名を広く知られることとなった。

 その契約とは、南オーストラリア州政府の全機関の情報処理業務を向こう9年間一括してEDSが受託するというものすごい内容のものだった。しかも、EDSは雇用調整されるはずだった同州の195人の職員をまるごと引き受けてしまったのだ。南オーストラリア州が同社に支払う委託手数料は米ドルに換算して総額5億ドルにも及ぶという。

日本の先端アウトソーシング会社

 さて、ここで話を日本にもどそう。日本でも、情報処理部門のアウトソーシングは1980年代、米国とほぼ同時期に始まっている。しかし、本格化したのは、バブル崩壊以降のことである。つまり、アメリカと同じく、コスト削減や経営の効率化が深刻な経営課題となり、リストラやリエンジニアリングが声高にいわれだしてからのことだ。

 従来の下請けや外注とアウトソーシングの違いは何か。アウトソーシングを一言で言うならば、「業務のプロセスを策定し、その業務を実際に執行すること」だといえる。

 従来の下請けはクライアントから言われた業務の執行だけを行ってきた。一方、ビジネス(業務)プロセスの策定を行ってきたのは、経営コンサルタントたちだった。

 現代のアウトソーシング会社には、効率的業務プロセスを策定・提案し、かつその業務を執行する、シンク(THINK)とドウ(DO)の両方の能力が求められている。

 この両方の能力を兼ね備える企業がそれぞれの分野でグングン業績を上げて行っている。これらの会社はアウトソーシングサービスを提供するものという意味で、アウトソーサーと呼ばれる。いくつか代表的なものを見て行こう。

◆営業代行◆

 企業のコア中のコアともいえる営業部門の業務を代行して急成長する会社がある。年商30億円をほこるマースジャパンがそれだ。

 同社は、食品会社のセールスマンや広告代理店の企画・営業畑を歩いてきた笠原社長が、25歳のときに起こした会社である。

 営業は企業にとって最重要の要素だが、プロの営業マンを育てようとした場合、それなりの期間や経費を必要とする。しかもそれだけコストをかけて教育したとしても、いつまでも自社にいてくれるという保証はない。

 「営業のプロを組織化したら、きっと需要はあるはず」笠原氏はそう考えた。最初は信用・実績ともになく、納品代行など販売促進業務の一部だけを請け負っていたという。

 しかし、そういった業務を着実にこなしていくうちに、少しずつクライアントも増えて、現在では食品、飲料、日曜雑貨、化粧品など35社との契約を結ぶまでになっている。

 同社の業務は、単に営業回りを行うだけでなく、企画、計画、実施、管理という営業に必要な業務の全てについて事前にクライアントと綿密に打ち合わせを行い、営業に関わる業務一式をまるごと請け負うところにその特徴がある。

 営業マンもクライアントに派遣するのではなく、マースジャパンの管理の下業務を行うことになる。

 そのため、一日数度の定時連絡、営業先への抜き打ち訪問など万全の管理体制を敷いている。万が一クレームがあれば、同社の人間が迅速かつ丁寧に対応する。営業マンは、クレーム二回、不正行為一回で解雇処分にされる厳しさだ。

 

◆秘書代行(テレマーケティング)◆

 小さな会社の場合、社員全員が外回りに出ることによって、会社のなかがカラッポになってしまうこともめずらしくないだろう。

 えてしてこういうときに限って、急を要する重要な用件の連絡が取引先から入ってしまうものである。そのような、不在時の電話受付業務を代行してくれるのが秘書代行だ。

 ベルシステム24もそんな秘書代行業務を行う会社として1982年に設立れた。開業当初は秘書代行業務が売上のほとんどをしめていた同社も、いまでは様々な分野のテレマーケティング業務を行い、約270億円の売上をほこる。

 テレマーケティング(以下テレマ)とは、電話などの通信手段を活用したマーケティング活動のことを意味する。テレマはインバウンド・サービスとアウトバウンド・サービスに大別 される。

 インバウンド・サービスとは、外から掛かってきた電話を受けるサービスのことで、さきに述べた秘書代行業務やパソコンに代表される家電商品などのカスタマーサービス(電話問い合わせ窓口業務)などがあげられる。

 一方アウトバウンドは、見込み客などのリストをもとに市場調査やセールスプロモーション活動を行うことで、広い意味での営業代行業務ともいえる。

 ベルシステム24の業務の柱となっているのは、このうち、顧客サポートを行うカスタマーセンターの業務請負だ。同社の売上の約6割を占めている。

 また最近では同社のほうから電話をかけるアウトバウンドも増えている。このアウトバウンドは新規開拓よりも既存客を対象にする場合が多いが、プレゼントやモニターの募集を行い、見込み客のデータベースを新たに構築しそこに対して電話営業をかけるような場合もでてきている。

 

◆製品化・商品化の代行◆

 技術立国日本には、小さくても独自の技術を有する研究開発型の企業がたくさんある。しかしこれらの企業は往々にして、自社が有する技術やアイデアをどのようにして製品化・商品化すればよいかわからずそれらを生かし切れていないのが現状である。

 そんな企業の製品化・商品化のサポートを行うのが日本テクトである。同社はこれまでに生産拠点をもたない研究開発型企業から1000件を超える相談を受け30種類近くの商品化に成功しているという。

 商品化を希望する企業から依頼があった場合、同社はまず、市場調査に取り掛かる。事業として成立するかどうかを見極めるわけだ。

 有望という結果がでたところで、生産に向けた具体的スペツクの検討に入る。同社は生産技術や設計技術に優れたメーカーをネットワークしているため、これらの企業から最も適した企業を選びだし両者の橋渡しをするわけである。また、出来上がった商品の効果 的販売方法など営業戦略の立案も行ってくれる。井深大タイプが多い中小ベンチャー企業にとっては、さしずめ盛田昭夫を手に入れたようなものといえるかもしれない。

 同社のこのような業務を可能のしているのは、企業経営の様々な分野に的確な助言を与えられる優秀な社員の存在である。ひとりが1社を徹底的に見ることを原則にしている同社はそのため、顧客企業数は多くないが、同社の社員が顧客企業の役員としてはいることもあるという。まさに、企業にとってのベストパートナーということができるだろう。

 

◆データ処理代行業◆

 データベースを活用したマルチメディア・アウトソーシングを展開するのが、粂井高雄社長のリベラコンスだ。

 同社はパソコンによる業務システムの導入コンサルティングからデータベースサービス事業、DTP制作事業、インターネット関連事業まで幅広く行っている。なかでも同社が最も力を入れているのが、データべースサービス事業だ。粂井社長自身、「パソコンが最も価値を発揮するのはデータべースのフル活用だ」と語る。同社のワークフローを、通 信販売会社の業務を請け負った場合を例にとって見てみよう。

 お客からの注文が入ると通信販売会社は、受け付けた内容をパソコン通 信を使ってリベラコンスのサーバーに送信する。通信販売会社の仕事はここまでで、受信したデータはリベラコンスのデータ処理センターで処理され同社が委託している物流センターへ発送の指示がだされる。

 また、物流センターからお客に届けられた商品の代金決済は、リベラコンスから送られた情報をもとに各金融機関が行うといった具合だ。

 クライアントである通信販売会社の手間は圧倒的に軽減されるわけだ。

 同社が独自に開発したデータべースソフトがこのサービスを可能にしているのだが、このソフトの最大の特徴は、顧客が現在所有するどんなパソコンでも対応可能なことである。つまり、顧客側は自社でパソコンを有する限り新たな設備投資が必要ないことになる。

 また、処理スピードも速く、同社で管理する3600万人の顧客データのなかから、任意のデータを検索するのに要する時間はわずか数秒という。

 最近では大手の証券会社がこのシステムの導入に踏み切り、その紹介で様々な企業が導入の検討に入っている。

 

◆債権回収代行◆

 企業にとって遅滞債権の回収は、その企業の資金操りにも影響する大きな問題である。大手銀行でも手を焼いているのだから、中小にとってはなおさらであろう。

 そんななかで、アドバンス&アソシエイト(以下A&A)が行う米国式の遅滞債権回収業が注目を集めている。

 日本では債権回収の代理人になれるのは法律で弁護士だけと定められている。しかし、様々な分野の業務を抱える弁護士事務所でこの分野を積極的に行っているところはあまりない。また、弁護士が行うのは、内容証明付き督促状の送付からはじまる裁判に向けての一連の作業。これが債務者への心理的圧力になって遅滞金の返済にすすめば良いが、経費の掛け倒れになることも少なくない。

 一方米国では、債権回収のビジネスは150年からの歴史があり、約5000社がこの業務に携わっているという。米国の債権回収業者は、債務者の事業内容や財務状態などを詳しく調べあげ、彼らの言い分も聞いたうえで回収にむけて柔軟に対応する。また、両者の言い分を調整し妥協点を提案したりもする。

 1992年に設立されたA&A社はこの米国式の債権回収の手法を日本に持ち込み着実に成果 を上げている。

 同社のクライアントに対し遅滞債権を有する会社が、別の会社から回収できない遅滞債権を有していることがわかり、そこもクライアントになってもらい二社同時に回収に成功したという事例もあるという。

 同社では先に述べた法律上の問題をクリアにするため、任意団体インターナショナル債権管理協会を設立し、依頼者にはこの団体の会員になってもらっている。2万円の入会金と一口2万円の出資金の支払いで会員となることができる、

 成功報酬制になっており、遅滞金額に一定の料率をかけて報酬額は算出される。例えば、遅滞金額が100万円以内で遅滞期間が60日以内なら回収金額の25%といった具合である。

 

 以上がSOHO経営者が活用できそうな主だったアウトソーシング・サービスだが、このほかにも様々な分野で法人向けサービス提供会社が登場している。

 この4月通産省では全国にあるこれらアウトソーサーの検索サイトをインターネツト上に立ちあげた。全国にある約1000社のアウトソーサー企業を分野別 に細かく分類し、各会社のプロフィールがわかるようになった非常に便利なものである(http://www.cyber-bp.or.jp/osd/)。

 同省サービス産業企画官の村上世彰氏は、「どこにどんなサービス提供会社があるのかその情報が一か所に集積されることによって、今まで潜在化していたニーズが一気に顕在化され新しい経済活力になっていくと思う」と、この分野の今後の発展を予測する。

 

少人数で大きな売上も可能

 今まで、大企業を初めとする日本の企業のほとんどは、全ての業務を自前の組織または系列の会社で行ってきた。

 製造業などの一部では優秀な技術力を持つ下請け企業が存在したわけだが、それ以外の様々な分野でのアウトソーシング化の流れはバブル崩壊以降顕著になってきている。

 本場アメリカではこのアウトソーシングを積極的に活用し、従業員5人で年間約800万ドル(10億円)を売り上げる会社も登場している。

 髪形を整えるアイデア商品を販売するトップシーテール(テキサス州ダラス)がその会社だ。髪形がきれいにまとまる便利さが大きな反響を呼び50カ国以上で売られている。

 この会社の本社は女社長であるエドマーク氏の自宅である。まさにSOHO企業なわけだ。

 同社は商品の製造からパッケージのデザイン、印刷、物流や経理に至るまで20社のアウトソーサー企業を活用し行っている。

 これは、自社で工場や倉庫を作る資金的余裕がなかったことと、エドマーク氏が、新製品の開発に専念したかったことからによる。

 同社の委託先は、単に当該業務を下請け的にこなすだけではなく、様々なアドバイスや提案を行ってくれるという。

 トップシーテールは委託先を選ぶとき、なるべく小さい企業にしているという。これは、委託先にとって同社が主要クライアントとなることで、パートナー意識が共有できいい意味での緊張関係ができるからだという。

 今後ますますアウトソーシングの環境は整備されていくことだろう。それは、SOHO起業家にとって、自分たちの活動領域がどんどん広がっていくことを意味する。それによって、日本版トツプシーテールが次々と誕生することが期待される。












 

※ご利用に際して

当情報は 2000年の春〜秋に発行された雑誌「DOPPO」の各記事を元に編集されております。
時間経過による変更などが含まれることから、情報の正確性などについて保証しかねます。
当時の参考資料としてご参照いただければ幸いです。
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