ひょんなことから「チーズ館」
居酒屋生まれの通販事業
インターネット通販店「チーズ館」店主 岡本明さん
インターネット通販が花盛りだ。稼げるか稼げないかは非常に興味のあるところだ。実際の店鋪であれ、架空商店であれ、商売をして生計をたてるというのは、資金計画に加え専門の知識とノウハウが必要だ。それに顧客の満足度を計りながら、サービスの質を変えていく柔軟性も要求されるから、開店には事前に入念な準備やチェックが欠かせない。ところが、インターネット上で「チーズ館」を経営する岡本明さんは違っていた。なんと「ひょんなきっかけ」で、後先考えずに始めてしまったという。よく行く居酒屋で、知人から仕入れたインターネットの知識を得意気に話していたところ、それならチーズを売ってみないか、と飲み仲間から誘われたことで、それまで啓蒙活動していた手前、引き受けざるを得ない状況になったという。
一から覚えたパソコンはマイナー機種
パソコンなんて知らない。一生使うことはないだろう、と思っていたパソコンを手に入れることから始まった。当時は「ウインドウズ95」がパソコン熱を煽っていた。岡本さんも煽られた口だ。詳しい友人にアドバイスしてもらいながら、購入したのは結構マイナーな機械だった。16メガ搭載で、しかも一番安いものを選んだ。この選択がパソコン習得中の岡本さんにプラスになったという。
「私みたいな超初心者がパソコンを覚える場合、まず最初に何をしますか?」ビギナー本を読むことはもちろんだが、そういった知識だけで理解することが困難なことは、多少パソコンを知っている人なら誰でも知っている。メーカーが設置している「サポートセンター」が岡本さんの先生になった。シェアの多いメーカーでは電話がなかなかつながらないが、そのメーカーは違った。インターネットで通
販をやろうと誘った友人からは、早く開設して欲しいと催促が来る。「サポートセンター」に毎日問い合わせる。キーボードの入力から教えてもらった。
「貸しきり状態ですね。本当に感謝しています」。メーカーの全面的な支援を得て、半年後に晴れて通
販ショップを開設できた。ホームページの作り方は、東大の学生課に電話して、アルバイトにきてもらった。パソコンにはまったくの素人だった岡本さんのホームページは、それから半年後に開設された。
「チーズ館」なら誰でもわかる
店の名前を考えた。シャレたものにしようとフランス語からとった名前を、居酒屋仲間にアンケートしてみたところ、誰もわからなかったという。だから誰でもわかる「チーズ館」にした。ネットでの「チーズ」の通
販では始めての店だという。それだけが自慢できると謙遜するが、売上げも、年々増加しているというから、「ひょんな」きっかけで始めた店としては成功といえるのではないか。
「でも、注文がくるなんて思ってもいませんでしたから、注文がきたときはびっくりしましたね」と笑う岡本さんはあくまで自然体だ。
最初、チーズに対して一般的な知識しかなかった岡本さんが、冷や汗をかいたことがある。電話でチーズを使った料理法を聞かれて、間違った方法を教えてしまったという。後で必死にフォローしたというが、相手は専門家だと信じて問い合わせるから、知識の習得も欠かせない。顧客とのコミュニケーションはもっぱらメールで行うという。リピーターが多く、日本全国から注文が来る。
もう一つの通販ページが本業?
奄美大島からの注文で、全国制覇を果たした「チーズ館」だが、実は岡本さんには、もうひとつの商売があった。画廊の店主だ。銀座で画廊を20年以上経営していたが、バブルで店をたたんだという。その画廊は「GALLERY
AKIRA」という名でインターネット上で復活、開店していた。この店の方がアクセス数が2倍近く多いという。
「実はこれが私の本業なんですよ」と渡された名刺には「中央画廊 岡本明」とある。画商とチーズ屋の店主とをどう解釈するかは自由だが、岡本さんの中では、どうやら違和感なく同居しているらしい。今まで気付かなかったが、部屋の壁には、かつて銀座の店で飾ってあったと思われる絵がさりげなく掛かっていた。
「だから、チーズ館での通販は副業みたいなもの」というが、アクセスがあってもなかなか売上げに結びつかない通
販ページが多い中で、チーズ、それもナチュラルチーズだけを販売、全国制覇を果
たす岡本さんの通販ページ。商売の秘訣を見た気がした。